法華宗宗務総長 原井 慈鳳
去る3月10日、中華人民共和国チベット自治区に於ける暴動より1ヶ月、僧侶、市民に死傷者がでている状況と、その後の各国の反応が世界に報じられました。全日本仏教会は、暴力に訴えることなく対話による問題解決の可能性を模索するよう強く求める声明を発表しました。宗教各団体も信教の自由や民主化を求めてあらゆる形の抑圧と暴力手段を排除すべきと主張し、流血の惨事の拡大を避け、ダライ・ラマ14世との対話を求める見解を表明しています。
1959年3月、チベット自治区ラサで民族独立蜂起の騒乱があってから49年目、インド ダラムサラにある亡命政府の平和的解決手段は少しも効果をもたらさないとの不満も含み、50年を迎える鬱積が爆発したのかもしれません。チベット青年会議の中には中道のアプローチでは問題は解決しないと考える人々もいるのです。
600万人のチベット人の宗教や言論の自由が危ぶまれていること、ラサに於いてはチベット人10万人に対し漢民族20万人、チベット語は次第に追いやられる運命にあると言われます。仏教の勉強がチベット自治区内でできない為に2500〜3000人の僧侶がインドに亡命して勉強している現実はそれを示しているのではないでしょうか。
高僧の生まれ変わり「活仏制度」に中国政府の許可制度が導入された事もチベット人を刺激していると思われます。
曽て清朝の乾ヘ帝はチベット仏教を保護した歴史がありますが1950年の政権は政教のトップに君臨するダライ・ラマ師の封建社会からチベット人を解放するという名目で解放軍を送っています。チベット人は仏教を国教としてダライ・ラマ師を尊崇するが故に解放軍とは認識せず侵略軍と見なしていたと考えられます。既に大きな認識の差が生じていたというべきでしょう。
すなわちチベットの伝統や文化遺産、仏教が長きに亘り危機にあるためにチベット人が行動を起こしていると思われます。
信頼できる報道によれば、チベット亡命政府は完全独立を求めているのではなく1988年以来、中華人民共和国の中で伝統、文化、宗教、個有の経済活動をチベットの自治に置いて欲しいと主張しているのです。中国人にもチベット人にも両者に有益な解決方法を求めているのです。
オリンピックの聖火ランナーが世界各地で護衛付きで抗議行動の中を走っています。これを軽視すべきではなく、オリンピックが中国で開催される事になったのは中国が開催国にふさわしい平和と平等を尊重する国である事を期待されているからに他なりません。
中国政府は対話の席に未だ着いていませんが、現状に対する世界各地の動きを無視すべきではないと思います。
私達は次の事を強く求めたいと思います。
(1)問題解決は封じ込めでは成就しません。あらゆる武力行使を止め、多数のチベット人負傷者の治療を早急に施す事を求めます。(人権尊重)
(2)国際的中立の組織が暴動の原因と真相を調査し、平和維持の為中国政府とダライ・ラマ師の対話を求めます。(言論の尊重)
(3)チベット人僧侶の現状陳述を求め、伝統、文化、宗教に対する差別や抑圧が無くなることを求めます(文化、伝統、宗教の尊重)
法華宗は菩薩行の実践として恒久の平和を求め続けます。
合掌
